星占いで見る第五舞台Ep.1

Ep.2公演がついに始まりましたが、今だEp.1に狂わされている私です。

なぜ私はここまでEp.1に狂わされているのか。
最大の理由は「Ep.1はあまりにも西洋占星術(星占い)に合致しすぎている」ことにあります。


私はこれまで、これほど完璧に西洋占星術の文脈をなぞる物語に出会ったことがない。
ここまで完璧に星占いの文脈の"正解"を選び、繋ぎ合わせ、そうして紡がれたEp.1の物語に、もはや美しささえ感じている。


星占いを得意とするイライは、もしかしたらこんな風に世界を見ているのかもしれない。*1
そんな私の解釈をシェアできたら。
そして2021年の今こそ、Ep.1を見返してほしい。
そんな思いから、この記事は生まれました。


例によってこの記事は調査報告レポート(感想文)の内容を前提に書いているので、こちらも併せて読んで頂けると有難いです。
mmmrk.hatenadiary.jp


【舞台本編(サバイバー編、ハンター編)のネタバレあり】
【背景推理等(複数キャラ)ネタバレあり】

Ep.1は風を起こし水瓶座を目指す物語だ

牡牛座生まれのイソップ、獅子座のナワーブ、蠍座のイライ。
牡牛座、獅子座、蠍座はいずれも、十二星座の「不動宮」というグループに属する。


星占い(西洋占星術をこの記事では"星占い"と呼ぶこととする)では、性質ごとに十二星座をグループ分けする分類がいくつかある。
そのうちの一つが、十二星座をそれぞれ四つずつ「積極的に行動し、物事を始める"活動宮"」「今ある状態を維持し、持続させる"不動宮"」「発生する問題に対し臨機応変に調整、対応する"柔軟宮"」の三つのグループに分ける「三原質(クオリティ)」という分類だ。


三原質(クオリティ)には一グループにつき、春夏秋冬の四つの星座が割り当てられる。
季節の始まりのスタートを切る活動宮、季節の盛りの不動宮、次の季節への移り変わりを予感させる柔軟宮、といった具合だ。
不動宮グループには、それぞれの季節の盛りの星座が集まっている。
春の盛りの牡牛座、夏の盛りの獅子座、秋の盛りの蠍座
そして冬の盛りを担当するのは、水瓶座だ。


また三原質(クオリティ)の各グループには、火土風(air:空気とも)水の四大元素の属性(エレメント:元素)を持つ星座が揃う。
感覚と物質の土の牡牛座イソップ、情熱と自発的行動の火の獅子座ナワーブ、感情と共感の水の蠍座イライ……。
彼らには、情報とコミュニケーションの風が足りない。その不動宮の風の星座こそが、水瓶座だ。



さらに言えば、サバイバー陣営には風エレメントの星座の生まれの者が誰もいなかった。
つまり、サバイバー陣営の彼等には「情報を得る」「コミュニケーションする」「人対人の関わりを重要視する」ことが欠けていた。
欠けていたからこそ、彼らは自分たちが持っていない風エレメントに象徴されるそれらを意識し、努力して手に入れた。
Ep.1はそんな物語であるように思う。




「革命」「自由」「マイノリティ」「他者理解」「個人の尊重」「多様性」「友愛」「信頼」「シェア」「コミュニケーション」。
そして「未来」と「希望」。

これらは水瓶座の性質を表すキーワードだ。
どうだろう、Ep.1を表すキーワードと一致しないだろうか。


イソップたち不動宮の三人には、水瓶座が欠けていた。
そしてサバイバー陣営には、風のエレメントの事象が欠けていた。


私はEp.1を「イソップたち五人が水瓶座の信念に目覚める物語」と解釈している。
水瓶座の"革命家"の素質を持ちつつもまだ開花させていない五人が、内なる水瓶座の力を目覚めさせ、未来を掴む。
彼らは水瓶座の信念に目覚め荘園に風を起こすことで、世界を構築する四大元素が揃い、完全な"世界"が完成する。


イソップたち5人の相性を星占いで読む

いわゆる陰キャ組の四人にハンターのジョゼフを加えた、Ep.1の主要人物の五人。
Ep.1の凄いところは、このいかにも「オタク人気の高い絡み贅沢二種盛り」な人選をした上で、「この人選でなければならなかった」理由を掘り下げ、見事なハッタリをかましきったところにある。
「この絡みでなければならない」理由を掘り下げ、圧倒的な力をもってして受け手に説得する。
本編中にジョゼフが言及したことを、Ep.1はやってのけた。
二次創作の理想形を、私はEp.1に見た。

イソップたち5人の関係を星占いの観点で見てみると、さらに「この人選でなければならなかった」理由がわかる。


牡牛座イソップと蠍座イライ

牡牛座と蠍座ホロスコープの対角線上に存在する、鏡合わせの関係だ。

五感を心地よくさせる具体的なモノを追い求める牡牛座と、「これこそが」「この人こそが」と心に決めた、目に見えない心、精神を一途に徹底的に追い求める蠍座
どちらもモノと精神の本質を見極める審美眼を持ち、「これは」というものを求める組み合わせだ。


違うけど近いものを持つ鏡合わせの関係だからこそ、相手の言動が目につきやすい。
人とのこころの繋がりを重視する蠍座のイライは、人と関わりを持たないイソップに他者の心に向き合う重要性を説いた。


牡牛座イソップと獅子座ナワーブと蠍座イライ

不動宮グループの水瓶座が欠けているこの三人。
星占いではこの特別な組み合わせ*2には、Tスクエアという名前がつけられている。

鏡合わせで対の関係の牡牛座と蠍座と、牡牛座と蠍座の両者の価値観とそれぞれ衝突する獅子座。「詰み」を感じるキツい組み合わせだ。
しかも自分の考え、価値観をなかなか曲げない不動宮。頑固者の三すくみとなっている。


魚座ノートン

ノートンだけは不動宮の三人と毛色が違う。

魚座は相手や事象に合わせて調整し、対応する柔軟宮。感情の水エレメントだから、それを人間の感情面で作用させる。
蠍座は対象の"あなた"と一つになろうとするが、魚座はそこからもっとずっと範囲を広げたすべてものと一体化しようとする。

人間の感情に関心を向ける水エレメント同士だから、ノートンはイライのそんな気持ちがわかる。
牡牛座と魚座は、どちらも人間の内面に関心を向ける。そして全てと一体化したい魚座は、牡牛座のイソップの気持ちもわかる。
魚座ノートンは、鏡合わせの牡牛座と蠍座の両者の気持ちがわかる。故に、ノートンは二人の調停役になる。


対して、魚座は獅子座とはまったく共通項がない。両者とも全く別の価値観を持ち、生きている。
ナワーブが一番「あいつは何を考えているかわからねえ」と感じるのは、実はノートンだったのかもしれない。
しかし魚座ノートンは、誰の気持ちもわかる。ナワーブにはノートンの考えがわからないが、ノートンにはナワーブの気持ちがわかるから、ノートンの方から歩み寄って二人は"マブダチ"になったのかもしれない。


また、魚座水瓶座の信念の「一人一人が個としてそれぞれに存在し、互いに発信し合い繋がる」を実践した際に生じる問題点を解決するため、「全てのものと一体化」して「全てのものを癒そう」とする。
魚座水瓶座のステージを経験した先にいる。


獅子座ナワーブ

牡牛座と蠍座とそれぞれ衝突し、魚座とは価値観がまったく違う。
実は獅子座のナワーブは皆と衝突しまくっていた。


また、獅子座は水瓶座と鏡合わせの対照的な関係にある。
獅子座は自分自身が特別な存在であると信じるが、水瓶座は一人ひとり皆がそれぞれに違う特別な存在であると信じる。


ナワーブがジョゼフから「お前は自己を発信し、他者理解に努めているか?」と"革命の種"を植え付けられるあのシーンは、獅子座のナワーブに水瓶座的マインドを問う試練なのかもしれない。


ジョゼフをどう捉えるか

Ep.1のジョゼフはどのような存在と捉えるべきか。

ジョゼフの記念日を誕生日と捉えると、彼も魚座生まれである。
フランス革命の犠牲者である背景からしても、ジョゼフは"革命"による痛みを知る魚座的存在なのかもしれない。


しかし、Ep.1で死を荘園にもたらし犠牲者が出るとしても自分の望みを叶えるための「革命」を起こしたとなると、ジョゼフはやはり革命家に象徴される水瓶座的存在であるように思う。
「他者の自由を尊重する」ことを捨てた、暴走した水瓶座だ。


同じように、イソップは牡牛座生まれではあるが「突然やってきた"新入り"」「サバイバーという社会集団に現れたマイノリティ」という側面を見ると、彼は水瓶座の役割も持っているように感じられる。
自由を求めて荘園を訪れた"新入り"の、サバイバー達に連携とフレンドシップと希望を忘れないことを説いたイライも、蠍座生まれであると同時に水瓶座の信念を荘園にもたらした存在と言えそうだ。



Ep.1に見られる水瓶座的要素

「革命」「自由」「平等」「平和」「友愛」「発明」「信頼」「シェア」「多様性」「コミュニケーション」。
そして「未来」と「希望」。

先述したように、これらは水瓶座の性質を表すキーワードだ。
これからは、Ep.1のそれぞれ水瓶座に対応する箇所を見ていこう。

1. 革命

ジョゼフが荘園主に「本当の死」実装を交渉をした出来事を指して「革命」と私が呼ぶのは、星占いの水瓶座の性質に由来する。
荘園に「『本当の死』革命」を起こしたジョゼフは、荘園に死をもたらした革命家だといえる。

ジョゼフが起こした「『本当の死』革命」は荘園全体に波及し、サバイバー陣営に「コミュニケーション、情報シェア革命」を起こした。

しかしジョゼフはフランス革命が原因で、弟のクロードを失っている。ジョゼフは元々、革命の犠牲者という立場の人間だった。
Ep.1は過ぎていった「革命の時代」に置き忘れ去られたジョゼフが、時を超えて荘園に革命を起こした物語なのかもしれない。


また、小麦市場に大きな変革を起こすことが許されなかった――「革命」を起こすことが許されなかった、イライという者もいる。


2. 自由

イソップとジョゼフは「荘園から出たい」と、荘園の束縛からの解放――自由を願った。

イライは神との誓約という枷を負っている。彼はその枷から解放されたいと願い、「自由」を求め、荘園の招待に応じた。
ナワーブは故郷の「グルカ兵となり家族を養う」伝統と軍隊の縦社会から逃れたいと願い、自由傭兵へと転身した過去を持つ。


3. 発明、革新、それに伴う犠牲

ジョゼフは写真家であると同時に、写真の現像技術を発明した発明家でもある。
また、ノートンは当時の発明品であるダイナマイトを用い、利益を得ようとした。


発明はそれぞれの分野で「革命」「革新」をもたらす。
そしてノートンがダイナマイトを用いたことで落盤事故が起き多くの犠牲者を出したように、革命には犠牲が付き物である。

革命とは、犠牲を出した上で人類全体が未来へと足を進めるものだ。
では、犠牲なくして人類が皆救われる道を歩むにはどうすればいいか。
この考え方は、水瓶座の「個の自由の尊重」を達成する上で発生する「自己責任」と対になる。


4. 平等、友愛

イソップ達と共に"未来"を語り合った時、イライは「イソップが死化粧用の絵の具の原料として、鉱石をノートンから買い取る」という案を思い付く。

ここでポイントとなるのは「ノートンはイソップからお金を貰い、その代価として鉱石を渡す」ということだ。

ノートンが一方的にイソップに鉱石を渡してしまえば、ノートンはイソップに貸しを与えたことになり、両者の力関係はノートンがイソップより上の立場となってしまう。
上下関係が発生してしまうのだ。

対して、金銭と鉱石の交換は"平等な取引"であり、イソップとノートンは対等な関係として取引ができる。
友人関係というものは、両者に上下関係が発生しないフラットな関係のことを指す。


イソップを象徴する黄バラの花言葉に、「友情」「友愛」「平和」がある。
Ep.1で示されたイソップの黄バラは、「友情」「友愛」の象徴だとしたら――。
私は密かに、そう願っている。



5. シェア、信頼

シェア――ここでは「ひとり占めせず、皆と共有すること」を指す。

かつては金品をひとり占めしようとしていたノートンは、「革命」が勃発したことで「シェア」することを学んだ。


自分が手に入れたものを皆にシェアしたら、財産をひとり占めするよりも、多くのリターンが得られることがある。
しかし、そのためにはシェアする相手との信頼関係ができていないと難しい。
自分が与えたものが誰かに悪用される可能性があれば、「シェア→得られたものを皆で山分け」はなし得ない。

ノートンが「ナワーブは寝る時にぬいぐるみを手放せない」という爆弾発言をあの場で投下したのは、サバイバー陣営の皆に信頼関係が生まれたからだろう。
誰かがこの情報を悪用する可能性があれば、おそらくノートンはこのネタを、皆が聞いている場でブッこまなかっただろう。

「ナワーブはぬいぐるみがないと寝れない」という情報をシェアすることで得られるリターンとは何か、それはわからないが――「これを皆に伝えておくから、ナワーブが困っている時には助けてやってくれ」ということなのかもしれない。


また、イソップとイライと共に戦うヘレナは、杖を叩くことでハンターと仲間たちの居場所をチームの全員に情報共有(=情報シェア)ができる能力を持つ。


6. 多様性

手に入れたものをシェアする際に、より多くのリターンが得られる条件というものが存在する。

それはシェアする場に「それぞれ違う性質、違う価値観、違う知識(≒財産)を持つ者」が集まっている場合である。


シェアされたものに新たな価値を付加する際、似た価値観や性質を持つ者が集まった場合と、それぞれ皆がバラバラな性質を持つ者が集まった"バラエティに富んでいる"場合とでは、後者の方が新たに得られる物が多くなる。
似た性質を持つ者同士が集まった場では、似たり寄ったりなものしか生み出されないだろう。
それぞれ別の個性を持つ多種多様なメンバーが集まっていたからこそ、サバイバーの皆の元にはバラエティに富んだ様々なスキルが集まり、皆でシェアして使うことができた。


もし同じような性質を持つ者が集まっていたとしたら、各人が提供できるものも似たり寄ったりだったはずだ。
そうしたら、手持ちのものでは対応できない"苦手"なもの・ことが発生したら、誰一人として対処できず全滅しかねない。


生き物は基本的には種の存続を安定・維持させるため、親の遺伝子をコピーした子孫を増やしてゆく。
しかし多数派では対応できないイレギュラーに対応し生き残るために、突然変異、つまり"異分子"を「生き残る可能性」として意図的に混ぜ込み、多数派と一緒に生み出す。
"異分子"、つまり「変わり者」は、「有事の際に種の存続を守るため、可能性を託され、希望を託され生まれてきた存在」だ。



そしてさらに、人間は「種としてのサバイバル戦略」として生み出された多様なタイプの個体同士が、それぞれ得たデータを持ち寄ってシェアし、互いにそのデータをサバイバルに役立てることができる生物である。


これはどういうことか。
他の生物、特に植物などは様々な遺伝子を持つ個体を生み出しても「この個性を持つ個体はこういう条件下において強い」「このタイプの個体はこういう条件下で弱い」というデータを集め、次の子孫の遺伝子情報に反映できるのは、データを得た代から何世代も先のことだ。

しかし人間の場合は何世代も待つことなく、同じ世代の別の個性を持つ者同士が情報共有できる。
しかも人間社会は様々な世代の個体が混ざり共存している。
人間は同世代間の情報共有だけでなく、異世代間の情報共有までもができる。


さらに人間は手紙を送ることで、空間的にも時間的にも遠く離れた個体同士が情報を共有できるようになった。
そしてさらに現在では、インターネットの発達によりもっと遠く離れた個体同士でも、もっと便利に情報共有ができる――。


7. 未来、希望

永遠にゲームが繰り返し行われる状況を、ナワーブは迷うことなく「不幸でしかねえだろ」と言い放つ。
永遠に未来が訪れず、未来に到達できない状況をナワーブは不幸だと考えている。


イソップとイライ、ノートン、そしてヘレナは、共に未来の自分たちの姿を思い描き、語り合った。
イソップが「この荘園を出ることがあれば」と、"未来"という概念を意識し始めたのは、ジョゼフが「『本当の死』革命」を起こしてからだ。



しかしイライは「革命」が起きる前からも、しばしば「いつか一緒に吞んでみたい」と"未来"を意識した言葉を口にする。
自由を手に入れたいと望み荘園を訪れたイライは「本物の死」が荘園にもたらされると知ってもなお、希望を捨てなかった。


どんな時も未来の楽しみを見つけ、明るい未来の到来を信じる。
明るい未来の到来を信じることを「希望」と呼ぶ。


真に希望を失ってしまったら、人間は生への執着を手放し、死んでしまう。
恐らくイライはそれを知っていた。知っていたからこそ、イライはけして希望を捨てず、サバイバーの皆に希望を示した。



「いつか荘園を出たい」という望みを見つけたイソップは、生きていれさえすればその「いつか」は必ず訪れると信じていた。


死んでしまえばそこまでで、「いつか」が訪れることはない。
しかし、生きていれさえすれば「いつか」は必ず訪れる。


「いつか」は遅かれ早かれ必ず来る。そう信じることで、人間は生存できる。



明日を繰り返した先にある「いつか」の到来を信じ、「いつか」に到達したいと願う。
サバイバーとは、そういう者のことをいう。


その「いつか」に到達するために、自ら行動を起こし、未来を手に入れる。
ハンターとは、そういう者のことをいう。

*1:西洋占星術で個人の資質と運勢を読み解くという使い方は、ちょうどイライ達が生きている時代に生まれたもの。イライがそういう風に星占いを用いているかは微妙なラインではある

*2:三原質の一グループのうちの星座のどれか一つが欠け、ホロスコープ上に直角二等辺三角形を形成する