第五舞台Ep.1に関する12のこと
第五舞台Ep.1の感想を先日アップしましたが、私はいまだにEp.2を浴びる心の準備ができていません。
書き記したいものが余りに多すぎる。それまでに『What to draw』という作品は、作品に触れた者の心に多くのものを残す。
今回は調査報告レポート(という名のただの感想文)では蛇足だと判断し取り上げなかったけど、どうしても伝えたいものを雑多に記していきます。
調査報告レポートで言及したことを前提に書いていくので、レポートも併せて読んで頂くと話が早くてありがたいです。
そしてこの記事は傭兵のオタクが書いているので、まあ傭兵の話をしがちです。
【舞台本編(サバイバー編、ハンター編)のネタバレあり】
【背景推理ネタバレあり】
1.各キャラクター毎のスキル=特殊能力の位置づけ
イソップは初めてゲームに参加したあの日、ヘレナの杖による情報シェア能力を目の当たりにしたことで一筋の光明を見出す。
僕にも力が秘められているんだ……!
僕に秘められた力とは、一体何なのか。知りたい。力が開花し、覚醒した自分を見てみたい。
イソップがこのとき感じた胸の高鳴りは、その後のサバイバー陣営が連携に目覚め「自分たちに秘められた力を引き出す」展開へと繋がってゆく。
Ep.1は原作ゲームの外在人格(=固有スキル)を「自身に秘められた力」、つまり「潜在能力」として描いている。
スキルというゲームの設定は、少年漫画的な胸アツ展開を演出する要素として活かされた。
端的に言えば、原作要素の料理の仕方がうまい。スキルという設定にそんなエモい意味を付加するなんて。
さらに特殊能力……「自分が持つスキル」は作中を通して語られる「個性」「自分とは何か」にも通ずる。
自分ができること、自分が与えられるものを皆にシェアしようにも、「自分が持つ力はいったい何か」「自分には何ができるのか」がわからなければ、それはできない。
自分には何ができて、何を皆に与えられるのか。つまり、「自分は何者か」を知っていなければ、自分は何を与えられるのかもわからない。
サバイバーの皆は各々が得意なこと、自分ができることを言語化して自分を知り、自己紹介し合うことで皆に「自分とは何者か」を互いにシェアした。
一方で、イソップたちに与えられた特殊能力は、パンドラの箱の中に残された希望でもある。
いっそのこと与えられなければ、きっぱりと諦め切れるのに。
下手に特殊能力なんてものを授けられたせいで、「これがあれば、もしかしたら今回こそハンターに勝てるかもしれない」と希望を抱いてしまう。
「次は自分がどんなことを成し遂げるのか、見てみたい」と願ってしまう。
希望なんてものがまだ残っているせいで、未練たらしく生への執着を捨てきれず、生きていたいと願ってしまう。
2. ジョゼフがナワーブに「革命の種」を植え付けるところ
当初は私はあのシーンのジョゼフの言動を「呪い」と表現していましたが、今では「革命の種を植え付ける」という表現に落ち着きました。
ここでいう「革命」は、ジョゼフが起こした「『本物の死』革命」そのものではなく、「『本物の死』革命」が引き金となりナワーブの内に起きた変化のことを指します。
「どんな仲間だ、大切に思っているのか? 大切に思われているのか?
お前は相手のことをどのくらい知っている?
お前は自分のことをどれだけ知られている?」
このセリフ、謎が多いですよね。
なぜ突然「お前は大切に思われているのか?」という問いがジョゼフから生まれるのか、それがずっと疑問でした。
范無咎を大切に思う謝必安と出会い、弟のクロードを大切に思っていた過去の記憶が呼び覚まされかけていたからこそ、ジョゼフは「大切に思われているのか?」と問いかけた。
そう考えるのが妥当なように思います。
ジョゼフはサバイバーのナワーブに対し「こいつらは大切に思い合っている仲間同士でチームを組み戦うが、ハンターの私は孤独に狩りをしなければならない」と羨ましく思っていたのか……。
でもあの時点でのサバイバーの連携の取れてなさから、ジョゼフは「折角こいつらには共に戦う仲間がいるのに、なぜ結束を深め合おうとしない?」と見抜いていたのかもしれない。
あの時点では「別にあいつらのことを仲間とは思っていない」と考えていたであろうナワーブと、反対に「俺たちサバイバーを好き放題に狩りやがって……」とナワーブに誤解されていた(本当はハンターを嫌々やっている)ジョゼフの間で「互いに相手を誤解したままに、言葉を交わす」状況。
それこそが、このシーンのポイントのような気がします。
でもジョゼフとナワーブは全く交じり合わないようでいて、実は二人とも「"永遠"から脱し、未来へ到達したい」と願っているんですよね。
二人共それに気付いてないけど。
しかもジョゼフが「お前は相手のことをどのくらい知っている?」「自分のことをどれだけ知られている?」と問いかける相手が……。
「あいつは何を考えているかわからねえ」「あんなことをするヤツの気が知れねえ」が口癖だったナワーブっていうのが……。
「お前の事情はわかった」とイソップを理解し、他者理解と自己開示に目覚めたことで成長を遂げたナワーブっていうのが……。
ナワーブ・サベダーという社会的地位を示す名前、つまりナワーブという個人そのものを開示しない名前を名乗るナワーブっていうのが……。
それなのに、獅子座生まれの性質から見るに「本当の俺のことを知ってほしい。本当の俺を受け入れて、認めてほしい」と密かに望んでいそうなナワーブっていうのが……。
私には……それは余りにも刺激が強すぎますね……(傭兵のオタクは天に召された)。
3. 作中における月の役割
月の出る夜はサバイバー棟とハンター棟の道が通ずる。
サバイバー棟とハンター棟の道が通ずる夜には、幸運児のボーイがその道を辿りハンター棟に顔を出し、ルキノやロビーをはじめとするハンターと心を通わせる。
そういえば、ボーイが初めてイソップにかけた言葉も「月が綺麗な夜ですね」だった。
つまり、イソップたち三人が荘園に招かれたのも、月が出る夜。
月が出る夜は、人間が生きる俗世間と荘園に道が通ずる時でもある。
月の出る夜は、イソップとイライが「今夜は月が綺麗だよ」「本当だ、月が綺麗ですね」と思いを分かち合い、言葉を交わし、心を通わせる。
月の出る夜に、ジョゼフは無咎と酒を呑み、過去の自分を思い出したと語る。
月の出る夜には、他者だけでなく、過去の自分とも繋がる。
4. 「イソップ……おやすみ」
これはイソップが「僕は死んだはずなのに、なぜ死んでいない!?」と狼狽え、サバイバー陣営をざわつかせた時のノートンの言葉。
イソップがにわかに信じられない言葉を口にし、皆が「あいつマジかよ……」と不審がる空気を出している中、ノートンはイソップに「おやすみ」と声を掛けてあげるんですよね。
けして気の利いた言葉ではない、ただの挨拶の一言。
でもこの一言にノートンは、「明日の朝には、僕はまた君に『おはよう』と声を掛けるよ」と思いを込めている。そんな風に感じさせてくれます。
その後のシーンで「僕たちにとっては、声を掛けるタイミングを掴むことさえ大変」と語るノートンは、きっとこの時もイソップにいつ声をかけようか考えあぐねていたのでしょう。
何か声をかけなくてはと思いはすれども、言葉を考えるうちに次から次へと衝撃的な事実が明かされ、声を掛けようにもかけられない。
僕は彼にどんな言葉をかけてやればいいのだろう……と悩んでいる間に、イソップが去ってしまう。
そして最後にようやくノートンが絞り出せた言葉が「おやすみ」の一言だった……と、私は思っています。
ノートンから「おやすみ」と声をかけてもらったイソップは、「おはようございます」とサバイバーの皆に声をかけるようになった。
イソップの声掛けはいつも、「おやすみ」ではなく「おはようございます」だった。
イソップは夜の静寂に身を委ねる合図の「おやすみ」ではなく、眠りから目を覚まし、夜を越え生き延びることができたからこそ皆に言える「おはようございます」を言うんですよね……。
ノートンとイソップは次第に「おやすみ」「おはようございます」は言わなくなる。
二人は「おやすみ」「おはよう」に頼らなくても、皆と会話ができるようになったのですね。
5. 「誰の為でもない、お前の為にだ……まずはそこからでいい」
ジョゼフの「『本当の死』革命」の話を聞いた時、ナワーブは「次こそは……なんて、言っていられなくなったな」とコメントしているんですよ。
それなのに、彼はイソップに「まずは『自分の為に』と思うところから、連携を考えてほしい」と伝える。
早く対処しなければ誰かが死んでしまうかもしれない。悠長にしていられない。
そうわかっている筈なのに。
人と関わることが苦手なイソップは、きっと自分に目を向けるだけでいっぱいいっぱいだ。
あいつが「誰かの為」に目を向けられるようになるまでには、おそらく時間がかかるだろう。
そう考えた上でナワーブは、イソップが「誰かの為」に連携が取れるようになる時が来るまで待とうと決めた。
それはイソップがいつか「誰かの為」を思い動けるようになる日がくる、とナワーブが信じている証明でもある。
イソップの事情を知ってから、「どんな風に言えば、あいつに俺の気持ちが通じるんだろう……」とナワーブが頑張って言葉を考え、いつかイソップ伝えようと準備してきた。
だからこその、「まずはそこからでいい」なのだと思います。
お兄ちゃんヅラしたがりなステのナワーブが他者理解と学んだら、皆の気持ちに寄り添いつつも皆に手を差し伸べられて、皆を光の差す方へと導いてあげられる……なんていう、もう最強の太陽の男になるんですよ。
ナワーブはイソップが人と関わることが苦手だと「わかった」にも関わらず、やはりイソップの胸にトンとこぶしを置くボディタッチをする。
ナワーブはイライから「イソップは人に触れられることも苦手」と聞かなかったのか?
それはわからない――が、しかし。
初めてナワーブから「連携」を求められた時には、肩に触れる、胸にこぶしを置く等の彼のスキンシップに、イソップは「連携」の強制と共に嫌悪感を抱いていた。
だが、ナワーブがイソップの事情と性格を理解し、その上で自分の思いを伝えた時。
イソップはナワーブの言葉とスキンシップを拒絶せず、受け入れた。
ナワーブがイソップと向き合い、コミュニケーションの仕方を考え直したからかもしれない。
しかし、イソップもひとと向き合うこと、受け入れることを意識し始めたからこそ、ナワーブの言葉とスキンシップ(=非言語コミュニケーション)を受け入れられるようになったのかもしれない。
6. 「イソップさん、私たちのこと、助けてほしいの」
「私たちにはあなたが必要なの」と伝える時に、一番グッとくる言い回しに出会ってしまった。
そう私は確信した。
ピアソンとライリーの「皆さん、我々を助けてください! お願いします!」的に頭を下げるセリフもいい。
けれども、イソップが「僕は皆に受け入れてもらえたんだ」「僕は皆から必要とされているんだ」と実感する決め手となったのは、やはりこのエマちゃんの「イソップさん」と呼びかけるこの言葉だったように感じさせる。
「助けて」と相手にすがる言葉は、相手にプレッシャーや"呪い"をかけかねない。
しかし居場所がなく、彷徨い、孤独を感じている人には「あなたの力を貸してほしい」という言葉は効く。
「私たちを助けてほしい」。その言葉は、相手に肯定感と勇気を与える灯となる。
「私たちのこと、助けてほしいの」と灯の言葉をかけてもらったイソップが、今度はノートンに「一緒にいてくれると心強いです」と灯の言葉をかけてあげるのも凄くよい。
自分が誰かから貰ったものを、また別の誰かに還元する。イソップがそれを覚えたとわかって、じいんときます。
7. イソップがラストゲームで隠密し、ジョゼフをやり過ごすところ
このシーンを初めて見た時、息を吞みました。
イソップがいま使った隠密スキルはきっと、ナワーブがシェアしたものだ。
直感でそうわかったからです。
ラストゲームにナワーブは参加できなかった。でも、彼がシェアした隠密スキルがイソップを助け、チームの皆を助けた。
スキルをシェアしてもらうこと。知識を誰かから授けてもらうこと。
それは、遠く離れていても、そのひとが傍についていてくれることと同じなんだ、と。
授かったスキルを通して、ナワーブと一緒にジョゼフに立ち向かうイソップを見て、私はそう感じたのです。
8. 「社交恐怖は大丈夫なのかい」「はい、それに……一緒にいてくれると、心強いです」
ノートンが「そっか……」と、イソップからかけてもらった言葉を噛み締めるように呟くのが、とても良いですよね。
それと同時にイソップのこのセリフで、ジョゼフの攻略法はみんなと一緒に固まって行動することだった……!と思い出させる仕掛けがすごい。
ジョゼフはイソップに連携、ゲームを通しひとと関わる"試練"を与える存在だったのか……! と、ここでわかる訳ですよ。
有識者の方なら、もっと前の時点でわかっていたのかもしれないけど。
そうなると、対戦相手がジョゼフだとわかっているにも関わらず「サバイバー同士で固まらず、散らばって解読しろ」とアドバイスしたナワーブは何なんだという話です。
あの時点ではサバイバーみんな、ジョゼフの攻略法を見つけ出していなかったのでしょう。
だからジョゼフは強かったし、ナワーブとノートンからも恐れられていた。
イソップたち新人の三人が、ジョゼフ攻略の突破口になったのですね。
9. イソップがチェイス中に壊せる壁を壊し、道を切り開くところ
赤の教会の壊せる壁ギミックを再現した演出を、ラストゲーム・イソップ対ジョゼフのチェイス中のあのタイミングで見せる意味とは。
壁を壊して道を作り出すギミックは、イソップが突破口を開き、活路を開き逃げる様子に見立てているのだと思っています。
イソップが"壁"を壊し、逃げ道を作り出すあの瞬間を見るたび、私はいつも涙ぐみます。
それも、死者が眠る墓場で活路を開き、あらゆる手を使って生き延びようともがくところがいい。
教会と墓場から漂う死の静けさと、壁を壊し突破口を開け、そこから光が差し込む動的な生へのアプローチ。
この二つのコントラストがいい。
10. ノートンが真っ先にイライの肩に腕を回すところ
無事に四人とも脱出できたと喜びを分かち合い、肩を組んだラストゲーム組。
一番最初に肩に触れたのは、ノートンでした。
イライとイソップを残し先に脱出したノートンは、本当に不安だったのでしょう。
もう誰も死なせないと強く思っていたからこそ、仲間を失うのは恐ろしかったはず。
だからこそ、イライとイソップが逃げ切って自分たちの元へ戻ってきてくれたのが嬉しかった。
かつては消極的で誰かしらに合わせて行動していたノートンが、積極的に自分からアクションを起こす。
その一番印象的なシーンは、ここではないでしょうか。
11. 美智子さんが新たな夢を見つけるところ
ジョゼフたちが荘園の外へ出た初例となり、ロビーくんが「荘園から出て世界旅行をする」夢を掲げるところ。
ハンターの皆さんの心にも光を差し込んだ、とても素敵なラストシーンですね。
美智子さんがロビーくんに「私も一緒に連れて行ってちょうだいね」とお願いしたところが、なぜだかとてもグッときたんですよね。
美智子さんが前を向き、未来を目指せるようになったんだなあ……と。私はそれがとても嬉しかった。
美智子さんが見つけたその夢は、"奪う者" "狩る者"のハンターのロビーくんが生み出したものだというのがまた素敵だ。
ハンターを「狩る者」→「望みを自分の手で掴む者」と解釈し、表現しきったEp.1は凄い。
12. 「ジョゼフが本当に手に入れたかったものは"未来"だ」と解釈し、表現したところ
私がEp.1から与えられたもののうち、最も大きなものはこれかもしれない。
ジョゼフは失ってしまった弟という過去に執着し永遠を求めていたようで、真に求めていたのは"未来"であった。
Ep.1がジョゼフというキャラクターを解釈し、導き出した論はこれだ。
ジョゼフが真に求めていたのは、弟のクロードと共に新天地で春を迎えるという"未来"だった。
"永遠"という人類が古来より追い求めた夢を切望したジョゼフは、写真技術を発明し、人類史の"未来"へと到達した。
"永遠"を手に入れるため、ジョゼフは写真技術の分野からのアプローチで"未来"へと進んだ。
2019年の時点でジョゼフの背景推理をここまで解釈し、公式二次創作として発表した第五舞台Ep.1。
恐ろしすぎませんか。
2019年ということは、まだジョゼフの記念日の手紙は実装されていない。
私はジョゼフの一年目の手紙を読んで、ようやく「ジョゼフはクロードと二人で、冬を生き延び春という未来へ到達したかったのか」と理解したというのに。
2019年の時点で、公演後に実装された一年目の記念日手紙の内容とまったく同じ文脈の解釈を導き出したって……。
第五舞台が導き出した解釈に、これからも触れていきたいです。
第五舞台、これから末永く宜しくお願いします。
(202/03/18 追記したため、11のこと→12のこと になりました)